駐車 estacionamento

  • 車を所有するということは、現地の社会の制度を理解し、それを遵守する必要があります。法律や税金、免許と言ったものから、交通法規、そして駐車といったものまで多岐にわたるのですが、できるだけきちんと現地の事情に精通しておかないと、結局困ることになることばかりです。”駐車”についても同じでたかが”駐車ですが、されど”駐車”。ここではサンパウロを中心としたブラジルでの駐車事情を紹介します。
     サンパウロ市内の駐車について語るには、まず、サンパウロの交通や駐車について管理しているCETという団体について語らせてください。
  • 【CET :Companhia de Engenharia de Tráfego 交通工学公社】
    ブラジルには警察組織のようなものがたくさんあります。大きな軍備さえ持つ軍警察。一般的な警察組織である州警察、そして大都市の交通を管轄する組織・・・。サンパウロにおいて 車を運転する際、特に気になるのがここでいう3番目の組織CET :Companhia de Engenharia de Tráfego セーエーテー:コンパンンニィャ ジ エンジェンニエリァ ジトラフェゴ」。(自分たちは単に「セッチ」と呼んでます)。「交通工学公社」というところでしょうか。警察組織ではないのですが、交通に関する取り締まりや規制に際して大きな権限を持ち、罰金や免許の点数などにも関わる反官半民の公的外部機関、という感じの組織です。
  • 正直言って、ブラジルで生活しているドライバーにとっては、できるだけ関わりたくない存在であることは間違いありません。
  • ブラジルは日本の23倍の国土面積を持つので、さぞかし土地に余裕があるのでは・・・と思っていましたが、それは都市部以外の話。都市部では地価が高騰しているので、路上駐車が自由にできる訳ではありません。さすがに取得時の車庫証明は必要ありませんが、路上駐車が自由にできる場所は非常に限られています。サンパウロの路上規範は上記CETがしっかり握っていますので、路上に駐車するにしても、規則を知りマナーを守らないと大変なことになります。
  • 【Sinal estrada 道路標識】
  • 市内の駐車のルールは、他の都市と同じように道路標識で表されています(これを設置しているのも主にCETです)。では市内の駐車に関わる標識を見ていきましょう。
  • ポルトガル語で駐車とは Estacionamento といいますので、頭文字は"E"。よって駐車禁止を表します。início イニスゥとは、自宅、という意味もありますが、この場合はここから始まりますよ、の意味(英語のstartかな)。

  • これも駐車禁止の標識です。下部には「月曜日から金曜日の7時から19時。土曜日の7時から19時」つまり、月から土の20時から6時頃(の夜間)と日曜日は駐車可能ということになります。下の赤い部分は「荷降ろしと荷物の積み込みは以下の時間帯可能です。月から土の7時から16時」とのこと。


  • 赤いマルにEが書かれたこの標識は「駐車可能」の意味。ただし「一般のタクシーのみ白線の内側に駐車可能。ただし3台まで。場所番号1672番」とのこと。つまりタクシーの停車場、タクシー乗り場の表示です。

    これも駐車可の表示。ただし病院前の「緊急停車帯」。Na faixa branca por 15 min pisca alerta acesoというのは、白線の内側に赤色灯を点滅した15分間のみ、ということのようです。

    これも駐車可の標識。大きな公園の回りの路上の標識です。ポイントは青で書かれた obrigatório cartão azul との表示。 obrigatório は要求、cartãoはカード、 azuは青、つまり「青いカードを要求します」とのこと。 これはサンパウロ市内の共通駐車券のことで、CETが発行していて市内の至る所にある路上のミニ商店で1枚150円程度で購入できます。 車のナンバー、駐車開始時間などを全て書きダッシュボードに置いておくと駐車禁止になりません。写真では「土日祝日の8時から18時まで1枚で2時間、2枚で4時間まで駐車可能」「バイクやバス、トラックは常時禁止」とのことです。
  • 上と同じような標識ですが内容はかなり異なります。「月曜部から金曜日の7時から21までが禁止」「青いカードを使うと、土日祝日の8時~18時は1枚で2時間、2枚で2時間駐車可」「ただしバイクの駐車は禁止」。

    上記の cartão azul カルタオン アズー が使える駐車スペースは 青いエリア(Zona Azul ゾナアズー)と呼ばれるのですが、 実はそこにはたいていこんな感じの人々がいます。公共の道路なのに駐車のためのスタッフに見えますが・・・。

    蛍光色のベストを着て、手には cartão azulを持っています。これらの方は何をするかと言いますと・・・。

    ななんと駐車しようとする車を誘導してくれます。た・だ・し、この場合、仮に手持ちに青いカードがあったにせよ、カードは彼らから買わなくてはなりません。当然割高で、通常R$3(150円)のカードが、R$10(500円)と言われることも良くあります。
    実は彼らは「勝手に駐車場係」。それらしい服を着ていることもありますが、それは彼らが勝手にしていること。法律的に彼らにお金を払う必要は全くないのですが、 ここに停めて何も払わないと何をされるかわかりません。よってここに停めるならば、不当な支払であることは承知しつつも彼らからかなり割高な駐車券を買い、停めるのが賢明です。車にいたずらされないかの見張り役、と考えると納得がいくかもしれません。なお最近CETのサイトを見ていたら、2017年ごろからこのカードは廃止されスマホを使った「デジタルゾナアズー」に移行しているようです。となるとこれらの「勝手に駐車場係おじさん」達は失職してしまっているはずです。仕事がなく、最低賃金も非常に低いブラジル。かれらはどうやって生活しているのかつい心配になってしまう今日この頃です。
    【Estacionamento 駐車場】

    では、ここで一般的な駐車場を見ていきましょう。需要あるところ供給ありで、人々が訪れる場所にはたいてい駐車場があります。ここはある海岸近くの駐車場。建物の奥にいきなり行く感じですが、盗難対策のためにはこれが普通の形です。
    ちなみに、ブラジル国内のどこでも駐車料金は非常に高く、数時間停めてR$20(1000円)程度は当たり前です。超格差社会ですので、車を持っているけど、超貧乏な方はいないと思うので仕方ないかもしれません。

    街中にも駐車場があります。白い看板には「駐車場。段差あり。洗車もしますよ」との表示。
  • サンパウロにあるリベルダージという東洋人街(昔は日本人街)という場所の駐車場。言い忘れましたが、ブラジルの小規模の民間駐車場は、キーを渡して停めてもらうことも多くあります。料金を支払う時、車種とナンバー、色などを言って持ってきてもらう方法が一般的です。
  •  サンパウロ市街に非常にたくさんあるショッピングセンターには必ず駐車場が付いています。車でないと入れないものもあります。一見当たり前 に感じることですが、ひどい格差社会のブラジルでは、車を持っていない階層の人を入店させないための店の施策ともいえます。 なお、ショッピングセンターと駐車場経営は別会社になっていることも多く、日本でよくある「何円以上お買い上げなら、何時間まで駐車料金無料」ということも一般的ではありません。ただし市街地から離れた場合はそういうサービスをしている店舗もあります。写真は郊外のショッピングセンターの入口ですが、ここは駐車場代は2時間無料とのことです。

  • 巨大なショッピングセンターの駐車場にて。日本と同じ雰囲気です。

    日本と同じような立体駐車場の所も多いです。表示は「進入禁止」。

    市内でも大きめなショッピングセンター Morunbi shopping http://www.morumbishopping.com.br/ の駐車場。 どこが空いているのか上部のライトですぐわかる優れモノです。

    ライトの仕組みはこんな感じ。車感センサーがむき出しの上部についているだけですが。

    自分たちのお気に入りのショッピングセンター(Zafari(
  • Bourbon Shopping) どうやらイスラエル系らしい)に掲げてある表示。「R$40(約2000円)、スーパーで買い物をすれば3時間駐車が無料になります。(車の送迎駐車、電子支払いシステムでの駐車は除きます) 無料処理はスーパーのレジにて直接行うもののみ有効です」

    スーパー、カフェフール(フランス資本の流通小売業者 Carrefour 日本ではかつてイオンがカリフールとして展開していました)のレジのディスプレイに貼ってあった表示。「R$40のお買い上げで4時間駐車無料です。ただし当日のみ有効」。

    ちなみにカフェフールとはこんな店舗。 ブラジルでは中位の(高所得者向けでも、低所得者向けでもなく中間程度の)スーパーです。駐車場は手前を地下に入って行ったところです。
  • 【Estacionamento em casa 自宅駐車場】
  • ここまでページを進めてきて、やはり、自宅の事情を紹介しないとブラジルの駐車事情はわからないかも・・・と考え、お恥ずかしいながらも自宅の駐車場事情を紹介してしまいます。
    まず、これが自宅全景。地上18階、地下2階。まあいわゆるマンションです。 サンパウロに住む日本人のほとんどの方は治安上の理由もあり、平屋住宅ではなく、こういった都会の高層住宅に住んでいます。

    地下駐車場の様子。地下1階と地下2階にしっかりと駐車スペースがあります。
  • 基本的に1戸につき、1枠のスペースが割与えられています。ちなみにこの場所は半年に一度の住民総会(?)により"くじ"で決められます。集会の日時はエレベーター内や、エレベーター乗り場が掲示板になっていて、「町内会のお知らせ」みたいに周知されます。
  • とにかく治安が悪いブラジル。拳銃強盗、窃盗、殺人事件は茶飯事です。地下駐車場に侵入されたらエレベーターを占拠され、一棟全滅になりますので、車の出入りは特に慎重です。具体的にいうと、完全二重扉になっています。たとえば中から外に出ようとするとき、内側の第一のゲートの前で待っていると、門番さんが、カメラで車と住人を認識して開けてくれます。そして中間部分に進むと後方で第一のゲートが閉まります。閉まったことを確認すると第二のゲートが開いて外に出られる、という仕組みです。

    これが外部に通じるゲート。外から帰ってくる場合は、これを開けるリモコンキーをもらえますので、ゲートの前に停車し、リモコン操作をすれば、この重いゲートが電動で動き、中間部分に進めます。

    こういった仕組みを実現するためには、どうしてもこれを見張る門番さん "Porteiro ポルテイロ"が必要になります。しかも24時間365日。無駄のような感じですが、こうやって人で監視していても犯罪が起こる街です。写真は自宅を車庫側から見上げたものですが、この右側のちょっと見える黒いガラスのところがPorteiroさんの詰め所です。
  • ちなみに徒歩で来た場合もチェックを受けます。カメラ付きのインターフォンで「だれが、何の目的で、だれに会いに来たのか」を告げて訪問先の住民と電話確認をしなければ、門すら開けてもらえません。入口には「訪問の方は、電話とカメラによる認証を受けてください」との表示がありました。

  • 「ドアマンが24時間いるなんてお金持ちだなぁ」 なんて思わないでください。サンパウロ市街地ではこれでも普通のレベル。高級住宅になれば、通りに面した入口に黒いスーツを着たガードマンが常時立っています。写真のマンションの外にあるパラソルの所にガードマンがいます。

    ガードマンの方の例。 黒人系の屈強な方がガードしている場合も多くあります。

    最後に自宅駐車場で見た、驚きの日常風景です。1家庭に1台分のスペースしかありませんので、2台持っている人はどうするのか、というとなんとできるだけ接近して停めて、1台分の場所に2台停めてしまうのです。

    駐車場は、横幅は1台分ぎりぎりなのですが、長さはやや余裕がありますので、こういったことも可能になるのです。でも、どうしてこういう事態になるかというと、このサイトでも紹介した、曜日別走行規制  rodízio ホジジョ が関係しているのだそうです。つまり毎日車を使いたくても、曜日によって走れない日があるので「車移動をあきらめるのではなく、別のナンバーの車を買って、車を乗り換えていく」ということをやっている人が多い、とのことです。つまり金銭的に余裕があるひとは、規制をお金で解決している、との話でした。
  • それにしてもギリギリに停めています。よく「日本人は狭いところの駐車が得意だ」というような方もいますが、国土が広いはずのブラジルでもやっぱり狭いところは狭いので、駐車テクに優れた人は大勢いるな、と思います・・・。

駐車事情 Circunstâncias do estacionamento

    車を持つデメリットの一つが、費用負担。意外に無視できないのが駐車場問題です。特に都市部で車を持っているとなると避けては通れない話題です。ここでは南米最大の大都市、ブラジル・サンパウロでの駐車事情を紹介します。
    「南米・ブラジルに住む」と聞くと、アマゾンのジャングルや、大平原の超ド田舎に行くようなイメージがあると思いますが、実際には自分の赴任したサンパウロは東京以上の大都会でした。そんなサンパウロでの駐車事情は日本とは全く異なり、非常に興味深いものでした。